「占星術」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。「星占い」と聞くと、もっと身近に感じる方もいるのではないでしょうか。朝のテレビ番組や雑誌の占いコーナーで目にする占いの多くは、西洋占星術に基づいています。
実は、世界にはさまざまな占星術の伝統があります。その中でも「インド占星術」と呼ばれるものは、独自の歴史と深い哲学を持っています。
ところで、夜空に輝く星々が私たちの人生にどんな影響を与えているか、考えたことはありますか?
満月の夜になぜか眠れなかったり、何をしてもうまくいかない日があったり、逆に「今日はついてる!」と感じる日があったり…。占星術では、こうした出来事を星々の影響として捉えます。
今回の初回ブログでは、そんなインド占星術の起源やその役割について、わかりやすくお話ししていきます。
「光の知識」JYOTISH(ジョーティシュ)の本質
インド占星術のことをサンスクリット語で「JYOTISH(ジョーティシュ)」いいます。
「JYOTI」は光、「ISH」は知識を意味し、直訳すると「光の知識」となります。
この「光」とは、私たちの目に見える光だけではありません。それは、宇宙の真理を照らし出す光であり、私たちの人生に影響を与える星々のエネルギーそのものを指しています。古代インドの賢者たちは、深い瞑想を通してこの光を観察し、その働きを理解してきました。
神から人へ – ジョーティッシュ誕生の物語
古代インドの伝説的な物語集「プーラーナ」にはこんなお話が描かれています。

その昔、世界が混沌とした時代「カリユガ」へと向かおうとしていたとき、パールワティ女神は、夫であるシヴァ神に尋ねました。
「もうすぐ暗黒の時代、カリユガが訪れます。その時代を生きる人々は、真実を見失い、深い迷いの中で苦しむことでしょう。そのような人々を導く光となる知恵を、与えていただけないでしょうか?」
パールワティ女神の問いにシヴァ神は、星々の神秘を読み解く知恵「ジョーティッシュ」の「ホラ」を授けました。これは未来を読み解き、運命を知るための占星術の手法です。
この知恵は、まずパールワティ女神から賢者ナーラダへ、そして17人の賢者たちへと伝えられていきます。
その中には、後に「インド占星術の父」と呼ばれることになるパラーシャラ仙もいました。彼は受け継いだ知恵を丹念に研究し、「ブリハト・パラーシャラ・ホラ・シャーストラ」という書物にまとめ上げました。この書は今日でも、インド占星術を学ぶ人たちにとっての教科書的な存在となっています。

古代からの実践的な知恵
「占星術なんて、単なる占いじゃないの?」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、古代インドにおいて占星術は、国家運営にも関わる重要な知恵でした。
王たちは、お抱えの占星術師を宮廷に置いていました。彼らは単なる助言者ではなく、以下のような重要な役割を担っていました。
- 国家の重要な決断における吉凶判断
- 軍事行動の最適なタイミングの選定
- 外交における相性の分析
- 王位継承者の素質判断
また、一般の人々の生活においても、
- 農業:種まきや収穫の最適な時期の決定
- 教育:子どもの才能や適性の見極め
- 健康:体調管理に適した時期の把握
- 商売:取引や契約に望ましい時期の選択
ジョーティッシュの本来の目的は「時を読む」ことにありました。この技法は「ムフルタ」と呼ばれ、人生における最適なタイミングを見極めるために使われてきたものです。しかし、時代とともに人々の関心も変化し、「ホラ」という個人の運勢や人生の転機を読み解く技法が発展してきました。こうしてジョーティッシュは、時を読むだけでなく、私たち一人ひとりの人生に寄り添う形へと進化してきたのです。
ヴェーダの「目」ジョーティッシュ
ヴェーダの知識は、古代インドで師から弟子へと口伝によって受け継がれてきました。しかし、伝言ゲームのように言葉が変わってしまうことがないよう、ヴェーダには「シャダーンガ」と呼ばれる6つの学問が伝統を守るための役割を果たしてきました。
その中で「ジョーティッシュ(インド占星術)」は、「ヴェーダの目」とも呼ばれています。この「目」は、時期を正しく読み、人生を見通すための力とされ、運命や未来を見極める手助けをしてくれるのです。
現代に生きる私たちへのメッセージ
インド占星術は、決して「これをしなければならない」という制約を課すものではありません。それは、私たちの人生に寄り添い、より良い選択をするためのヒントを与えてくれる、道しるべのような存在です。
例えば
- チャレンジに適した時期を知る
- 慎重になるべき時期を理解する
- 自分の強みや可能性を発見する
これらの知識は、人生の岐路に立ったとき、私たちの心に確かな光を投げかけてくれます。
おわりに
インドでは、インド占星術は単なる占いではなく、立派な学問として扱われています。実際に、インド占星術を専門に学べる大学まで存在するほどです。
そんな深い伝統を持つインド占星術ですが、私が特に魅力を感じたのは、パールワティ女神とシヴァ神の神話です。この神話には、占星術が人々を導くために与えられたという温かな思いが込められています。ヴェーダの物語を信じるかどうかは人それぞれですが、私はその美しい物語がとても好きです。
人生でうまくいかないことがあったり、何かに頼りたくなったりする瞬間があるかもしれません。そんなとき、星々からのアドバイスに耳を傾けてみると、新たな気づきをもたらしてくれるかもしれません。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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